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あむりたのしずく

あむりたのしずく

3・マタニティライフ

[1997年・創生会レポート掲載]

  私は以前から、自我を見つめる際のキーポイント、インナーチャイルドやバーストラウマ(妊娠中や出産時に受けた心身のストレス・ショックが傷となり、その後の呼吸や発育、性格形成などに多大な影響を与えるというもの)に興味を持っていました。それらの影響を極力少なくするためには、自然な形でのお産がとても大切であると考え、情報収集していたのです。

  セドナでシャーリーンのリーディングを受けた時「あなたは過去生で、スピリチュアルな産婆さんをしていて、胎児のメッセージをお母さんに伝えて出産方法をコーディネイトしたり、大人の生まれ変わり(再誕生・リバーシング)の儀式を誘導してトラウマを癒す手伝いをしていました。」と言われ、納得がいきました。

  しかし、情報をしっかり握りすぎていた私は、バーストラウマが心配でたまりません。妊娠に気づいてから随分長い間葛藤し、純粋に喜んであげられなかったことで、お腹の子が傷ついているのではないかと、罪悪感を感じていました。でも罪悪感など、何の役にも立ちません。見かねた(?)ユリスさんから「何々をしてはいけない、せねばならない等ということは何もありません。お母さんのしたいように、したいことをして下さい。ただストレスを内側に溜め込まれるのだけは困ります。」とのメッセージが・・・。フッと肩の力がぬけました。お母さんが安心していることが赤ちゃんにとっても一番なのだと気づかされたのです。

  かくして、心身ともにつわりとおさらばした私は、最初で最後かもしれない貴重なマタニティライフを堪能するべく、アクティブに行動を開始したのでした。

  まず、私はどのようなお産をしたいのか、ビジョンを確立することにしました。妊娠直前に御縁をいただいていた、日本周産期環境研究所が主催する水中出産連絡会のワークショップに参加して、お産の仕組みを学び、水中出産とはどのようなものかビデオで実例を見たり、実際に出産用プール(組立式で楕円形の大きなバスタブのような物)を使って身体を自由に動かしたりしながら、自分の望む出産のイメージを膨らませていきました。最終的には、それを家族や助産婦さんなどに具体的に伝えるため、バース・プランを作成するのです。

  同時並行で新居探しが行われました。ゆったり子供と接しながら生活できるよう、神田にあった事務所を引き払い、職住兼用の戸建てを借りることにしたのです。私は最初自宅出産に憧れていましたが、お産について理解を深め、自分の内側を見つめていくうち、自宅では仕事や人の出入りが気になってリラックスできないといった不安を感じていることに気がつきました。

  そんな時、世田谷バースハウス(注:現在は改名・移転してアクアバースハウス)という、水中出産のできる助産院の存在を知ったのです。ここで赤ちゃんを産むとの直感がありました。そして、いくつか挙がった移転先候補の内、結局トントン拍子に話が進んだのは世田谷にある家だけで、八月からは新生活がスタートしたのでした。
 
  見学に行ったバースハウスは、吉田松陰を祀った松陰神社の近くにありました。ごく普通の日本家屋で、助産婦であるY先生の他何名かのスタッフで運営している、こじんまりとした暖かい雰囲気の助産院でした。私は、ここなら安心して出産に臨めると確信し、毎月検診に通って赤ちゃんの元気な心音を聞くのを楽しみにするようになりました。

  お腹の子は順調に成長してくれているようで、北軽井沢へ避暑に訪れ、友人のお宅でくつろいでいる時、初めての胎動を感じました。おたまじゃくしがくるくると泳いでいるような、かわいらしい、でも確かな生命の脈動に不思議な感動を覚えました。ずっと女の子が欲しいと思っていた私は、この子にユリスさんにちなんだ名前を贈りました。文字や発音のとおり、柔らかな感性を伸びやかに開花させていってくれれば、との祈りを込めて・・・。

  6カ月を過ぎ安定期に入った頃、出産に向けての身体づくりのため、私はマタニティ・ヨガの教室へ通い出し、毎日ヨガと一時間以上のウォーキングを欠かさず行い、食事の内容や体重管理にも気を配るようになりました。私にとってそれは決して辛い努力ではなく、今しかできない妊婦としての生活、その体験を思いっきり楽しんでいたのです。

  私が妊娠してから最も大きく変化したのは、自分の身体の声に注意深く耳を傾け、真剣に向き合うようになったことです。自分の所有物であり、当然の権利として時には乱暴に、おざなりに乗り回していたこの身体が、ある日新たな生命を宿し、自分の意志とは関係なく劇的に変貌を遂げ始める。まさに無からの創造、物質化現象です。もはや自分一人の身体ではなくなり、生命を預かり育む大切な方舟となります。身体に注意を向ければ向けるほど、心の動きとの密接なつながりを実感し、その繊細で完璧な仕組みに驚異と感謝の念がわき上がってきました。
 
  バースハウスの嘱託医であるK先生のお話しを引用させて頂きます。『私は子宮です。私の唯一の働きは収縮です。収縮はエネルギーです。私は今妊娠しベビーを抱えています。きれいな羊水をいっぱいに満たし、その中にベビーを浮かべて育てています。時々は可愛くてたまらずやさしく収縮して抱きしめてしまいます。しかし、やがてそのベビーとの悲しい別れが来ます。予定日を過ぎると私はベビーを世の中に送り出すために、収縮して子宮口を開きます。そしていよいよベビーが産まれる時は、世の中に出て呼吸するのに困らないように、収縮の度に胸を圧迫して呼吸運動を教えます。』

『私の不満は、主人である貴女が私に「陣痛」というあだ名をつけて嫌な目で見ていることです。私は何も貴女を苦しめているわけではありません。むしろ私と一緒になってベビー誕生に力を貸して下さい。そんなに難しいことではありません。私がエネルギーを出して収縮したら「あら、お願い。ご苦労様」と言って、心と体をリラックスしてくれればそれでいいんですよ。そしてゆっくり息を吐いたり、動きたいように動いてみて下さい。それだけ私の仕事ははかどります。妊娠中も時々は私に会いに来て下さいね。私達は良い仲間なのですから。触ったりなでたりして頂くと私、本当に嬉しいのです。それではお産の時にまた会いましょう。さようなら』この言葉は私の心に染みわたり、陣痛に対する怖れを手放すことができたのです。



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